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UAEにおける「企業の社会的責任(CSR:corporate social responsibility)」

 湾岸諸国においてUAE企業の社会的責任は高く評価されている(The National 2014年4月1日付)。たとえばEtisalat社のCSR報告書(Etisalat[2012])には、同社のCSRの取り組みとしてアフリカの妊婦向けモバイルサービス提供やUAE国内の温室効果ガス削減プログラム、若者向け電子図書館などの教育プログラム等が挙げられている。こうしたUAE企業のCSRに対する取り組みは、湾岸諸国の中では相対的に先進的であるとされる。

 一般に途上国企業は、その成長過程の初期において資金繰りに困難を抱えることが多く、収益の拡大と再投資を優先するためにCSR活動や慈善活動が重視されることは稀である。インドのタタ財閥がジャムシェドプールにインド初の製鉄所を操業開始した1912年に、労働者の労働時間制限を設け、労働者家族に対して無料の医療サービスや教育サービスを提供したような事例(小島[2008])は、従業員とその家族の大多数が自国民であるインドでは効果的であった。自国民の生活安定と能力開発が長期的には自社を含めたインド経済の発展につながることが予想できるからである。

 しかし湾岸諸国企業のような多数の外国人労働者が従事し、また従業員の移動が頻繁に行われるケースでは、CSR活動の対象を誰としているのかが問題である。仮に、湾岸諸国企業のCSR活動が極端に自国民の労働者や周辺住民を優先し、外国人労働者とその家族を無視するものであるならば、それは労働法制の未整備を裏付けるものであり、欧米をはじめとしたCSR先進国からの投資が回避される可能性がある(金子[2010])。

<参考文献>
Etisalat[2012]“Etisalat CSR & Sustainability Report 2012”
金子由芳[2010]「産業開発と法制度整備」高橋基樹・福井清一編『経済開発論』勁草書房
小島眞[2008]『タタ財閥』東洋経済新報社
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じゅん

Author:じゅん
中東経済、企業金融が専門の研究者。UAE・アブダビから帰国しました。
Researcher:Middle Eastern Economy, Financial Development, and Islamic Finance
باحث: الاقتصاد في الشرق الأوسط، التنمية المالية، والتمويل الإسلامي.

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