HOME   »  経済学って面白い
Category | 経済学って面白い

[医療]医療経済学の基礎

ひょんなことから「医療経済学」について触れる機会があった。

全くの門外漢なので「医療経済学」とは何かというところから学習する必要がある。真野[2012]の入門書をもとにまとめておきたい。

1. 医療に応用できる経済学の方法論

■組織の経済学(産業組織論) …医療についてSCPパラダイムの適用
■公共選択論 …市場以外の領域でも「合理的経済人」の存在を想定
■ゲーム理論
■行動経済学 …人間の経済行動を心理的側面から分析
   ・不確実性下では人間が合理的な判断をするとは限らない。
   ・2つの心理的バイアスが存在:①「自信過剰バイアス」と②「自己奉仕的帰属バイアス」

2.医療の財としての性質

① 人間の基本的ニーズ(K.Arrow)
② 必要性と費用を予測出来ない
③ 情報の非対称性を持つ
④ 不可逆性、私的財、手段財
⑤ 医師(供給者)誘発需要を持つ

こうした理論的な部分を理解したうえで、湾岸産油国の医療制度をしばらく観察してみたい。

【参考文献】
真野俊樹[2012]『入門 医療経済学―「いのち」と効率の両立を求めて』中公新書、第3章。
41QR26PHKQL.jpg

[日本][企業統治]日本企業の統治構造の問題点

空文化した東芝の企業統治のニュースが出ているが、こうしたことは昔から指摘されていた。

日本の企業統治構造について佐久間[2003]をもとにまとめておく。

■日本の企業間関係の特徴 … 株式相互所有、メインバンク制、役員相互派遣

1. 日本の企業統治の歴史(1990年代まで)
■1992年 証券取引等監視委員会を新たに設置 → 産業界の抵抗で権限・独立性が縮小。
■1993年 商法改正 → 監査役による監査機能強化もあまり効果を上げず。
■近年、外国の機関投資家(1990年代から)や日本の機関投資家(2000年代から)による企業統治活動が活発化?

2. 所有構造と資本市場
■日本の株式会社の所有構造
   ①法人所有比率が高い
   ②大企業間で広く株式相互所有
■日本の資本市場の構造の特徴
   ①経営者間の乗っ取りや敵対的買収を嫌悪
   ②経営者が乗っ取り防止策としての安定株主作り
   ③資金調達に占める間接金融の比率が高かったため「市場の規律」が働きにくい。
   ④金融市場に占める公的部門の比重が大きい。

3. 機能していない統治機関
■株主総会 … 非民主的な運営、多数の株主とのコミュニケーション不足
■日本企業の監査役 … ほぼ機能していない。監査役の人事権を実質的に社長が掌握しているため。内部昇進がほとんどで社内の役員中での序列も相対的に低かった。
■取締役会 … 業務執行とそれに対する監視の2つの機能が未分離。取締役の中に序列が形成。社外取締役が少ないこと、取締役会の構成人数が多いこと、取締役会のメンバーの多くに部門管理者が含まれること
■取締役と監査役の事実上の選任権を握っているのは経営者。

【参考文献】
佐久間信夫[2005]「日本の企業統治構造」佐久間信夫(編)『企業統治構造の国際比較』ミネルヴァ書房、第1章。
41ZTVNRRQ5.jpg

[金融][経済成長]金融機能を組み込んだ内生的成長モデル

奥田[2010]は、金融機能を組み込んだ内生的成長モデルを示した。金融制度が発達した場合、マクロの経済成長率にどのように影響を与えるかを説明した。

内生的な成長率の決定

まず、内生的成長モデルにおいて経済成長率がどのように決まるかを示す。

新しい資本ストックが増加するほど、投資の収益率が高まるような新興市場経済を想定する。このような場合のマクロ生産関数を以下のように設定。とする。

    Yt=F(Kt ,(KtLt))=F(1,Lt)Kt、ただし経済全体の資本ストックKtと労働Lt   ・・・・・・式(1)

(KtLt)は生産性を考慮した労働の投入量。これは、資本蓄積が進むと研究開発や人的投資が向上するため、労働の生産性が高まることを想定。生産関数はKtと(KtLt)に関して1次同次と仮定。

一人当たり生産量yt=Yt/Lt、一人当たり資本ストックkt=Kt/Ltとすると生産関数(1)は以下のように書き換えられる;

    yt=F(1,L)kt=Akt 、A≡F(1,L)   ・・・・・・式(2)

一人当たりの資本ストックkの増加額⊿ktは、

    ⊿kt=syt-γkt=sAkt-γkt   ・・・・・・式(3)

ただし、貯蓄率s、資本の減耗比率γ。資本ストックktの増加率は⊿kt/kt=(sA-γ)であり、一人当たり産出量Akt(経済成長率)も同比率。

金融機能の発展と成長率

ここで、資金の出し手と受け手の間に情報の非対称性が存在すると仮定。投資収益率rt、資本の限界生産性A、情報の非対称性から生じる追加的費用θとすると、資本ストックの増加は、

    ⊿kt=(1-θ)sAkt-γkt    ・・・・・・式(4)

このとき、資本ストックの増加率は、

    ⊿kt/kt=(1-θ)sA-γ

取引費用θを縮小させるためには、金融制度の発展が効果的。

結論:「金融制度が整備されると、取引費用θが低下、資本ストックの増加率⊿kt/ktが上昇、結果的に経済成長率が上昇する」。

証券取引所入り口
<カタル・ドーハの旧市街にあった旧証券取引所。現在はドーハ西エリアのDana Towerに移転 2008年10月筆者撮影>

【参考文献】
奥田英信[2010]「途上国開発と金融の役割」奥田英信・三重野文晴・生島靖久『新版 開発金融論』日本評論社、第1章

銀行の収益性と企業ガバナンスとの相関関係分析

この記事はブロとも、もしくはパスワードを知っている方のみ閲覧できます
パスワード入力
ブロとも申請

金融機関のプロジェクト評価(project evaluation)機能と企業ガバナンス

■金融機関は、投資先の収益とリスクに関する情報生産を行う。的確に情報生産を行うことで、投資先・融資先からより確実に資金を回収し、収益を確保することができる。
■限られた資金(資本金や預金・投資資金)を元に、どのように効率的に収益を上げていくかが金融機関の課題。
■重要な要素が企業ガバナンス。金融機関における統治が欠如すると、経営者が株主利益よりも自己利益を優先するインセンティブを持ちやすいため、金融機関は効率的な資金配分が困難になる。金融機関における資金配分の失敗は、金融機関自体の収益を低下させることにつながり、主要な融資先である国内の企業部門に十分な資金が行き届かなくなる。

UAE金融市場における流動性リスク管理(Liquidity risk management)

■金融機関は、短期で資金運用したい資金提供者と長期資金を必要とする資金需要者との間を仲介する機能を持つ。
■UAE企業にとって、長期資金の確保は困難。
・・・Obay[2012]:UAE企業はGCC諸国の中では相対的に銀行借入に頼り、株式市場への依存度は小さい。UAE企業は企業規模は大きくなく、借入による資金調達(特に短期負債)が多い。また、これらの負債依存の傾向は、大企業ほど、固定資産が多いほど、そして収益率が低いほど強い 。

表:GCC上場企業の資本構成(平均値、2000-2009年)
002_20150531020502528.png
出所:Obay[2012]、Table2,3より筆者作成。

【参考文献】
Obay, L. A. (2014). The Determinants of Capital Structure Choice : Case of G CC Listed Companies. In E. Woertz (Ed.), GCC Financial Markets: the World’s New Money Centers (pp. 111–136). Gerlach Press.

UAE金融市場におけるリスク分散(risk diversification)

■預金者の拡大、金融機関の増加、投資先(企業)の増加によって、投資資金のリスク分散がされる。
■近年、UAE銀行市場はより「競争的」に(Al Muhattam[2010])。

図:GCC預金市場における集中度の推移(1993-2002年)
001_201505310152546bf.png
出所:Al Muharrami[2010]より筆者作成。
注:図の集中度はHerfindahl-Hirschman Indexで計測している。

■拡大する預金・貸出市場;預金・貸出ともに相対的に大きなUAE銀行市場

図:商業銀行の預金残高の推移(% of GDP)
図:商業銀行の貸出残高の推移(% of GDP)
出所: IMF, Financial Access Survey (FAS)より筆者作成
注:同データベースにはバーレーンのデータが掲載されていなかったため、本グラフでは除いた。


【参考文献】
Al Muharrami, S. (2010). Measurement of GCC Market Concentration. In S. Al Muharrami (Ed.), Arab GCC Banking - Measurement of Competition (pp. 33–63). Saarbrücken, Germany: VDM Verlag Dr. Müller Aktiengesellschaft & Co. KG.

金融の未発達と低水準均衡

この記事はブロとも、もしくはパスワードを知っている方のみ閲覧できます
パスワード入力
ブロとも申請

アラブ首長国連邦(UAE)の金融情勢;低水準均衡からの脱出

【目次】

1.はじめに;金融の未発達と低水準均衡
  ① UAE金融市場におけるリスク分散(risk diversification)
  ② UAE金融市場における流動性リスク管理(Liquidity risk management)
  ③ 金融機関のプロジェクト評価(project evaluation)機能と企業ガバナンス
2. UAE金融機関における企業ガバナンス
  ① 企業ガバナンスの枠組み
  ② 金融機関に対する企業ガバナンス枠組み
  ③ UAE金融機関の取締役会の構成
  ④ UAE金融機関の取締役会における財閥ファミリーの関与
3. 銀行の収益性と企業ガバナンスとの相関関係分析
4. おわりに:まとめと今後の課題

UAE金融機関によるガバナンス強化の取組み(3/3)

3. おわりに:金融機関の課題

 本報告書では、UAE金融機関の取締役会の構成について、各金融機関の年次報告書やコーポレート・ガバナンス報告書からの情報をもとに整理した。その結果、限られたサンプルながらも、首長国家や有力財閥ファミリーが取締役として名を連ね、経営部門を監督していることが分かった。また、経営陣と直接的な関係を持たない社外取締役や、金融機関の株式持ち分を保有しない独立取締役も少数ながら選出されていることが明らかになった。

 金融機関に対するガバナンス強化のためには、証券取引所に上場している非金融機関向けに課されているような、より厳密なガバナンス規制を金融機関にまで拡大する必要がある。しかし、UAEのような発展途上国では、経営知識や金融知識が豊富な人材は限られており、厳格な経営と監督の分離や取締役の権限の限定を行うために十分な人員を確保することが難しいことが考えられる。金融機関に対する画一的な監督強化が、ステイクホルダーの利得を確保と金融システムの強化を同時に増進することができるかどうかについて、引き続き調査と分析が必要である。
FC2カウンター
こんな人が書いてます

じゅりあん

Author:じゅりあん
中東経済、企業金融が専門の研究者。UAE・アブダビから帰国しました。
Researcher:Middle Eastern Economy, Financial Development, and Islamic Finance
باحث: الاقتصاد في الشرق الأوسط، التنمية المالية، والتمويل الإسلامي.

最近の記事
カレンダー
02 | 2017/03 | 03
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -
2017年1-3月のタスク
①【消費】やらないことを決める ②【投資】論文2本執筆 ③【空費】体重を5kg減
カテゴリ
最近のコメント
最近のトラックバック
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
日記
8645位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
会社員・OL
1566位
アクセスランキングを見る>>
原油価格チェック
Twitterはじめました
RSSフィード
リンク
ブロとも申請フォーム
ブログ内検索
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

今月のできごと
最近インプットしたメディア